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物流業界が人手不足になっている原因とは?解決策やすべきことを解説

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2024.04.01

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物流業界の人手不足は、複数の要因が絡み合うことで深刻化しています。EC市場の急速な拡大や、新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要などは、宅配便需要を加速させました。また、長時間労働、休日の少なさ、平均賃金の低さなども相まって、若年層の業界離れが進んでいる状況です。

この記事では、物流業界で人手不足となっている主な原因6つを紹介するとともに、現在実施されている対応策や、各企業が取り組むべき対策について解説します。

 物流業界は人手不足になっている

物流業界は深刻な人手不足に直面しています。

日本の物流の「2024年問題」は、2024年4月1日より施行される「働き方改革関連法」によって、トラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限されることで発生する諸問題です。国の検討会によると、2024年には輸送能力が14.2%、2030年には34.1%不足すると試算されています。
(出典:全日本トラック協会「知っていますか?物流の2024問題」/https://jta.or.jp/logistics2024-lp/

また、2017年時点でトラックドライバーは約10.3万人不足しており、2028年には不足人数が約27.8万人に拡大すると見込まれています。
(出典:公益社団法人鉄道貨物協会「平成30年度本部委員会報告書」/https://rfa.or.jp/wp/pdf/guide/activity/30report.pdf#page=112

増加する輸送需要と減少する供給力の乖離によって、人手不足の問題が発生しています。そのため、業界全体で対策が求められている状況です。

 物流業界が人手不足になっている原因6つ

物流業界の問題の根源とも言える人手不足の改善に向けた対応策を知るために、まずは人手不足の原因について把握するのが重要です。以下では国の資料をもとに、人手不足となっている原因を6つ解説します。
(出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」/https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001514680.pdf

EC需要により宅配便が増加した

新型コロナウイルス感染症の流行により、巣ごもり需要が高まったことで、EC需要が大幅に増加しました。BtoB貨物は減少傾向でしたが、宅配便の取扱個数は増加傾向でした。
(出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」/https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001514680.pdf#page=5

また、日本国内のBtoC-ECの市場規模は、2013年の約11.2兆円から、2022年には約22.7兆円まで拡大している状況です。
(出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」/https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html

配達量が増えるに伴い、ドライバーや仕分けスタッフなど、フロントラインで働く従業員の業務量も増加しています。特に、時間帯指定配送や翌日配達など、顧客ニーズの多様化により、作業量はさらに増加している傾向です。また、宅配便の増加に対応するため、倉庫などの物流施設が必要となりますが、建設が追いついていない状況も見られます。

再配達により業務に無駄が生まれる

初回配達時に受取人が不在であれば、配送業者は同じ荷物を複数回運ばなくてはなりません。再配達は、物流業界にとって大きな無駄であり、環境負荷やドライバーの負担増加などの問題も引き起こしています。

共働き世帯の増加や、日中の外出機会の減少により、不在がちになっていることが主な原因とされています。また、置き配に対する不安や、置き配サービスの利用率の低さも少なからず影響しているでしょう。

効率化の観点からも、再配達の削減は業界全体の課題となっており、受取人の在宅確認や荷物の一時保管所の活用など、さまざまな対策が進められています。

運転手の高齢化が進んでいる

運転手の高齢化も物流業界の人手不足を深刻化させる大きな要因の1つです。

運送業界における労働力の年齢構成を見ると、45~59歳の割合が全産業平均と比較して11.5%も高く、29歳以下の若年層の割合は6.5%低い状態です。
(出典:厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「統計からみる運転者の仕事」/https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

バブル期に多くのドライバーが採用されたため、その世代が現在高齢化していることが主な原因です。時間外労働の削減や、健康管理の徹底など、高齢ドライバーが働きやすい環境を整備する必要があります。

また、若年層の労働者が業界に流入しにくい背景には、運送業の厳しい労働環境や、業界の魅力が低いことが考えられるでしょう。

業界の平均的な賃金が高くない

2018年の時点では、業界の平均的な賃金は全産業平均と比較して、大型トラック運転者で約1割低く、中小型トラック運転者で約2割低い状態でした。2022年に賃金の改善が進み、大型トラック運転手の平均年収が日本の平均年収を上回る状態となりました。

【物流業界の平均的な年収(2022年)】

 営業用大型貨物自動車運転手の平均年収  約477万円
 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)の平均年収  約438万円
 日本の平均年収  約458万円

(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」/https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040029185
(出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」/https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2022.htm

しかし、大型車を除くトラックドライバーの平均年収は依然として日本の平均年収を下回っている状況です。低賃金という問題は、長時間労働や厳しい労働条件と相まって、既存労働者の離職率を高め、新たな人材の獲得を困難にしています。また、賃金が低いため、長時間労働で収入を補わなければならないという悪循環も見られます。

賃金の引き上げや労働条件の改善は、人手不足を解決するための急務であり、業界全体での取り組みが求められていると言えるでしょう。

労働基準法改正で長時間労働が規制された

物流業界では、ドライバーの慢性的な長時間労働が問題となっており、改善するために労働基準法が改正されました。この改正は、労働者の健康保護とワークライフバランスの向上を目的としていますが、一方で、人手不足をさらに深刻化させる要因でもあります。

ドライバーの労働時間の上限が設けられたことで、特に人員が限られている小規模な運送業者は同じ仕事量をこなすためにより多くの人員が必要です。しかし元々、中小企業のドライバーは長時間労働が顕著な傾向にあり、既に人材が不足している状況の中で追加の労働力を確保することは、かなり厳しい状況です。

長時間労働の規制は労働者の健康と安全を守る上で重要ですが、同時に物流業界における構造的な問題、特に人材不足の問題を引き起こしています。

積載効率の悪化・荷待ち時間の増加により生産性が落ちた

積載効率の悪化や荷待ち時間の増加も、生産性を低下させる要因の1つです。具体的には、荷物を空の状態で運んだり、荷物の積み込みや荷下ろしのために長時間待たされたりすることが問題となっています。

調査によれば、トラックの荷待ち時間の平均時間は1時間45分であり、2時間を超える荷待ちが発生しているケースは28.7%にも上ります。
(出典:厚生労働省「貨物自動車運送事業における生産性向上に向けた調査事業の報告について」/https://www.mlit.go.jp/common/001185828.pdf#page=6

どちらも運送業務の効率を大きく損ねる要素であり、特に人手不足が深刻な現状では、限られた人員と車両リソースを最大限活用することが必要です。

業界では、この問題の是正と生産性の向上のため、デジタル技術を活用した効率的な物流システムの導入や、配送ルートの最適化などに取り組んでいます。しかし、まだ十分な効果が見られていない現状もあります。

積載効率の向上や荷待ち時間の短縮は、人手不足の直接的な解決策となるわけではありません。しかし、限られたリソースを有効に活用し業務を効率化することは、人手不足の緩和につながります。

物流業界が行っている人手不足の解決策

国土交通省と日本ロジスティクスシステム協会は「ロジスティクスコンセプト2030」を発表し、物流業界の改善に取り組んでいます。ロジスティクスコンセプト2030とは、2030年までの物流業界のあるべき姿を描き、目指すべき方向性を示したものです。
(出典:国土交通省「ロジスティクスコンセプト2030」/https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001334732.pdf

以下では、現在、物流業界が行っている解決策を5つ紹介します。

業務の標準化

標準化とは、業務を一定の基準やルールに従って統一することで、効率化やコスト削減、品質向上、リスク管理を実現するプロセスです。

物流業界では作業の属人化を防ぎコストを削減するために、精度の高いマニュアル、フローチャート、標準作業手順書(SOP)などの導入が進められています。これらを導入することで作業内容の均一性が保たれ、新規従業員の教育時間の短縮や、作業ミスの削減を期待できます。

また、国土交通省も、物流の自動化や荷主・物流事業者間の連携強化を目指した環境整備の標準化を推進しています。標準化は、物流現場での作業が作業者任せになることを防ぎ、品質のばらつきを減少させ、現場改善を促進するでしょう。

積載効率の悪化・荷待ち時間の増加により生産性が落ちた

物流現場での人的業務をシステムやロボットに代替させることで、人員不足を緩和し効率化を図っています。

   【例】

  • 物流ロボットの導入
    人が行う検品や棚卸作業の手間を削減できる。
  • ハンディターミナルの活用
    作業のスピードアップと精度向上を図る。
  • データに基づいた配送管理システムの利用
    輸送の最適化を進め、配送効率の向上を図る。交通状況やドライバーの人数などを考慮した上で、最適な配送ルートを計画してくれるので、個人の判断に委ねず効率的な配送計画を立てることが可能。

IT技術の活用は業務の効率化・品質向上・人材不足解消のみならず、新たなサービス開発にもつながり、物流業界に新しい付加価値をもたらすことが期待されています。

労働環境の改善

ドライバーの負担軽減のため、荷物の積み替え作業を減少させる取り組みが行われています。具体的には、積み替え商品のロケーション化や荷主への配送荷物表示依頼、送付先の区分や整理・表示の徹底などの改善策が導入されました。この取り組みにより、ドライバーの作業時間が短縮され、誤配とそれに伴う再配達が減少しました。

また荷主企業とのコミュニケーション強化により、積み下ろし作業の改善や荷待ち時間の削減、長距離輸送のスケジュール調整が行われるようになりました。その結果、ドライバーの拘束時間の削減につながっています。
(出典:厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「トラック運転者の改善事例」/https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/example

 

女性活躍の推進

トラック運送業の女性就労者の割合は約18%であり、全産業の女性就労者の割合の約43%と比較すると低くなっています。また、女性のトラックドライバーの割合はさらに低く、3%に満たない状況です。
(出典:国土交通省「若年層・女性ドライバー就労育成・定着化に関するガイドライン」/https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/ikusei_teichaku.pdf

物流業界では女性活躍の推進を目指し、以下のような施策が講じられています。

 働き方の改善
定時退社やシフト制、フレックスタイム、短時間・短日数勤務、テレワークなど多様な勤務体系の導入が促進されています。

 

 荷役作業の負担軽減
運転と荷役の分離、自動倉庫や無人搬送車(AGV)の導入などが進められています。女性だけでなく若年層やシニア層にも負担を減らし、より多くの人が物流業界で働きやすい環境を整備しています。

 

 施設面の改善
女性専用のトイレや更衣室、休憩室の充実、内部設備の向上など、働き手が快適に過ごせる職場環境の提供が進んでいます。

 

ドローンを活用した配送

ドローン配送は、人の手を介さずに荷物を目的地まで届けられるため、ドライバーや配達員の不足を補うことが可能になります。特に、過疎地や離島、災害時の孤立した地域への配送において、ドローンは地形を問わず迅速に荷物を届けられる点がメリットです。

ドローンによる配送は、渋滞による配達遅延のリスクを軽減し、配送コストの削減にも貢献します。また、環境負荷の低減にもつながり、サステナブルな物流システム構築への期待も高まっています。

物流業界では、ドローン配送の実用化に向けた実験や試験運用が国内外で活発に行われており、将来的にはドローンによる配送が日常的な物流手段の1つとして定着する可能性を秘めているでしょう。

物流業界の各企業が人手不足に向けてすべきこ

政府の方針を受けて、各企業が人手不足改善に向けてできることとは何なのか、以下ではその具体例を解説します。物流企業が人手不足に対応し、業務の持続可能性を確保するためにもぜひ参考にしてください。

ドライバーの待遇の見直し

ドライバーの仕事は責任重大であり、長時間労働も伴います。しかし、現在の賃金水準は、ほかの業界と比べてやや低い状態です。人材確保のためには、まず競争力のある賃金水準を確立することが必要です。具体的には、最低賃金の引き上げや、経験や能力に応じた給与体系の導入などが考えられます。

賃上げにより、ドライバーとしての職をより魅力的な選択肢とすることが可能です。また、賃上げは既存のドライバーのモチベーション維持にもつながり、離職率低下に期待できます。

ほかにも、長時間労働や休憩時間の不足はドライバーの負担を大きく増加させています。ドライバーの労働時間の上限は法で整備されましたが、実態に乖離がないよう注意し、ドライバーの健康と安全を確保した働きやすい環境を作ることが重要です。

物流業界は伝統的に男性が多い職場ですが、待遇の見直しを通じて女性ドライバーや外国人労働者など、多様な背景を持つ人材が活躍できる場を提供することも大切です。

勤怠管理の厳格化

勤怠管理を厳格に行えば、実際に働いた時間の正確な把握が可能になり、労働者の過重労働を防ぎ、公正な労働環境を確保できます。長時間労働を抑制し、ドライバーの健康と安全を守ることは、企業の使命です。

また、正確な勤怠管理は、ドライバーの稼働時間の把握に役立ち、以下のような業務の効率化にもつながります。

  • 残業時間の削減
    過剰な残業時間を削減し、ドライバーの負担を軽減できる。
  • 人材配置の最適化
    必要なタイミングに必要な人員を適切に配置し、効率的なオペレーションを実現できる。
  • 車両稼働率の向上
    空車時間の削減により、車両稼働率を向上し、コスト削減につながる。

勤怠管理システムを導入していない場合は、法令遵守を徹底するためにも、導入することが望ましいです。

DX化による業務改善

DX化によって、単純作業を自動化し、ドライバーはより付加価値の高い業務に集中できます。まずは、自社の物流業務における具体的な課題を明確に特定しましょう。

  • 人手不足
    どの部門で人手不足が起きているのか、原因を分析する。
  • 非効率な作業
    時間のかかる作業や無駄な作業を洗い出す。
  • ミスが多い作業
    ミスが発生しやすい作業を特定し、原因を分析する。

特に、在庫管理は物流業界において中心的な業務の1つであり、効率的な在庫管理システムの導入は、業務効率を大きく向上させられます。

最新の在庫管理システムでは、リアルタイムでの在庫追跡、自動補充、需給予測などが可能であり、在庫の過不足を防ぎながら、必要な商品を適切なタイミングで補充できます。過剰在庫によるコストの発生を抑え、また、品切れによる機会損失を最小限に抑えることが可能です。

ほかにも、梱包・ピッキング・配送準備などのプロセスに自動化技術を導入することで、人手不足による影響を軽減すると同時に、作業の効率化を実現できます。自動化によって、従業員はより高度な業務や戦略的な仕事に集中でき、全体としての生産性向上につながるでしょう。

⇒参考記事:物流倉庫の自動化はメリットが大きい|課題点や成功事例も解説

荷主や消費者への呼びかけ・交渉

人手不足の解消には、業界全体で取り組むことが重要であり、荷主や消費者への理解と協力を得るために、積極的に呼びかけ・交渉していくのが大切です。

荷主に対しては、例えば、荷物の配送時間や料金など、柔軟に対応してもらうよう依頼したり、長時間労働や休日出勤の削減など、ドライバーの働き方改革への理解を求めたりすることが挙げられます。

消費者に対しては、配送料金や配送時間の値上げへの理解を求めたり、ネット通販での注文時に、配送日時を柔軟に指定してもらうよう啓蒙したりすることが挙げられます。

適切なアウトソーシング

人材不足や業務過多で負担が大きい部門の業務をアウトソーシングすることで、業務効率化を図れます。物流アウトソーシングにもさまざまな種類がありますが、倉庫保管・管理、配送、ピッキング・梱包、その他各種手続き・事務作業などのアウトソーシングが一般的です。

アウトソーシングを検討する際には、どの業務を外部に委託するかを慎重に選定する必要があります。コア業務は内製化を維持し、非コア業務や専門性が求められる業務をアウトソーシングすることが大切です。

まとめ

物流業界は現在、深刻な人手不足に直面しています。EC市場の拡大や、消費者の即日配送への期待の高まり、働き手の高齢化や労働条件の厳格化などが、主な要因です。業界ではこの課題に対処するため、若年層はもちろん、女性や高齢者の積極的な採用、労働環境の改善、効率化を目指したIT技術や自動化技術の導入が進められています。

また、企業独自で時間外労働の削減施策も行っていく必要があり、誤積載を防ぐための工夫や、荷待ち時間の削減、荷主企業とのコミュニケーションなどが重要です。

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