国内市場の成熟化が進む中、新たな販路として注目されているのが「越境EC」です。
かつては高いハードルがあった海外販売も、近年は各種支援サービスの登場により、驚くほど簡単に始められるようになっています。
本記事では、越境ECの基礎知識から導入準備、具体的な始め方、そして初心者にもおすすめのサポートサービス3選を紹介します。
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越境ECを始めてみよう!誰でも手軽に越境ECを展開できるサービス3選
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2025.06.20
目次
越境ECを始めるための準備
越境ECは魅力的な市場である一方で、国内のみのECと比較すると事前に準備しなければならない項目がいくつか存在します。
越境ECの展開を検討している場合は以下のポイントを抑えることが重要です。
越境ECの市場規模やメリット・デメリットなどの知っておきたい情報は下記記事にまとめておりますのでぜひ参考にしてください。
商品の選定
まだEC運営を行っておらず、これからEC運営を始め、越境ECまでを視野に入れている場合は取り扱う商品が海外ニーズを満たしているかを考えてみましょう。
越境ECでは国際物流にかかる送料や関税が商品原価に上乗せされるため、単価の低い商品では採算が取れにくくなります。
また、国内で人気の商品が必ずしも海外市場で受け入れられるとは限らず、各国の文化的背景や消費習慣を踏まえた商品選定が求められます。気候や生活様式の違いによる実用性の差異も考慮する必要があります。
そのため、国際配送コストと関税を考慮しても利益を確保できる適切な価格帯であり、現地の文化や生活習慣に合致する商品、あるいは「日本文化」として受容される商品を選定した方が良いでしょう。
特に越境ECにおいて市場が大きいアメリカと中国については消費者のニーズや嗜好を押さえておくことが重要です。
中国人が越境ECにおいて日本から購入するものは化粧品、日用品、食品などが多いです。
一方でアメリカ人が越境ECにおいて日本から購入するものは衣類や靴・アクセサリー、玩具・趣味用品、教育系(図書)などが多くなっています。
その他アニメやフィギュアなど日本独自のキャラクターグッズは国を問わず人気と言えます。
法規制の確認
国ごとに異なる輸出入規制、税関申告、知的財産権に関するルールを把握する必要があります。特に医薬品、食品、化粧品、電化製品などは販売可能かどうか事前に確認が必要です。
取り扱う商品が多岐にわたる場合は必ずターゲットとなる主要な国のルールを確認しておきましょう。
JETRO(日本貿易振興機構)や税関のサイトなど公的支援機関を参考にすることでコンプライアンスリスクを最小限に抑えることができます。
決済手段への対応
国や地域によって主流となる決済手段は大きく異なるため、適切な決済手段を導入していないと売上機会の損失に繋がってしまいます。
例えば、日本やアメリカではクレジットカードが主流ですが、ドイツなどのヨーロッパの一部地域では「paypal」が主流な場合もあります。
中国ではオンライン決済サービス「Alipay」やクレジットカードの「UnionPay(中国銀聯)」が主流です。
ターゲットとする国の決済手段事情を事前に調査し、適切な決済手段への対応をしておきましょう。
多言語対応
越境ECに対応しているサービスの場合は、ボタンを押すだけで、自動翻訳してくれるようなものもあります。
そのため、本格的な翻訳が難しい場合でも、多言語展開できる機能があればだれでも手軽に越境ECを始めることができると言えます。
ただ、自動翻訳では商品の細かいニュアンスは伝わりにくいため、商品に対する問い合わせなどがあった場合は、相手国の言語で対応しなければなりません。
その他、住所の入力先が国内のみの場合、海外から商品を購入することができないため、住所の入力についても確認しておきましょう。
越境ECの出店方法
実際に越境ECを展開する方法について経済産業省が発表している令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書を参考に解説します。
現在越境ECの展開は大きく6つの方法に分類することが可能です。
国内で自社ECサイトを構築する
日本国内に自社ECサイトを構え、越境に対応する事業モデルです。
元々国内向けに日本語で運営している自社ECサイトを多言語化することで海外からのアクセスでも不自由なく閲覧することができます。
越境ECに対応するための自社サイトの構築はフルスクラッチで制作する場合もありますが、パッケージ型やASP型など既存のECカートに越境ECをサポートするサービスを組み込むことで実現が可能な場合もあります。
国内の海外に対応しているECモールに出店する
日本国内の越境ECに対応した楽天やAmazon、Qoo10などへ出店する事業モデルです。
今回紹介する6つの事業モデルの中でも難易度が低く、越境ECの展開の足がかりとして優れていると言えます。
元々国内向けに出店していた延長線上として、海外の消費者に向けて販売ページを用意するためあまり工数がかからず、越境EC周りの知識があまりなくても始めることができます。
例えば楽天などは、海外販売機能の利用が完了すれば、日本語版ページから機械翻訳で「外国語版の商品掲載ページ」を自動生成する機能が利用できる他、出店モールの海外サイトに出店されるなど、手軽にショップを越境EC対応できることがメリットになります。
相手国のECモールに出店する
ターゲットとする国のECモールやECサイトで出店する事業モデルです。
出店するためには現地のECモールやECサイト運営事業者とのやりとりや現地での法的な手続きが必要となるためハードルが高いことが特徴です。
これらの出店に関するノウハウがない場合は専門の代行業者などにサポートしてもらうことも一つの手段です。
保税区を活用して出店する
保税区とは関税法上の「保税地域」の一つで、外国貨物を輸入申告前に一時的に保管できる場所を指します。
この一時的に保管可能な保税倉庫を活用して出店する事業モデルです。
保税ができる地域は事前に定められており、主に港湾・空港の近くに設けられています。
保税区に指定された地域の倉庫にあらかじめ販売したい商品を輸送しておき、受注後に保税倉庫から配送します。
特に中国向けの越境ECでよく活用されており、通常のECと違い日本からの発送ではなく、中国本土からの発送となるため消費者が負担する輸送費の削減、配送リードタイムの削減などのメリットがあります。
一般貿易型EC販売
一般的な貿易と同様に、国内の輸出者と相手国の輸入者との間で貿易手続きを行い、相手国側のECモールやECサイトで商品を販売する事業モデルです。
一般的なBtoB型貿易において販売チャネルとしてECを活用するスタイルと言えます。
相手国でECサイトを構築する
相手国側で自社ECサイトを構築する事業モデルです。
既に相手国で自社商品が浸透し、かつECサイト運営を自社でコントロールできる体制が整っている場合は取り組みやすいと言えます。
この事業モデルは膨大なリソースが必要となるため、基本的に資本やリソースが豊富にある企業が取り組む場合が多いです。
越境ECをサポートするオススメサービス3選
以下は国内で自社ECを構築した上で、越境ECの対応を支援してくれる代表的なサービスです。
ZenLink(ZenGroup株式会社)
既に運営している自社ECにバナー用のJavaScriptの専用タグを1行追加するだけで、海外からのアクセスに応じて自動的に海外専用バナーを表示することのできるサービスです。
海外からのアクセスにおいて離脱の原因となってしまう配送先情報などのフォーム入力を言語切替や購入ボタンを通じて対応可能です。
また、19言語への対応やローカル支払を含む150種類以上の支払に対応できることも魅力です。
料金は販売手数料として売上の10%のみとなっており、初期費用や月額固定費がかからず購入者や言語別のアクセス解析、購入データなど確認することが可能で、販促改善や戦略立案にも役立てることができます。
商品が売れた後は指定された国内倉庫に商品を発送するだけでZenLinkが国際発送や関税周りまで一括して対応してくれます。
その他、約180万PVほどの閲覧数があるZenMarketへの掲載や、270万人規模のメルマガへの配信など集客支援機能も充実しています。
WorldShopping BIZ(株式会社ジグザグ)
https://www.worldshopping.biz/
「WorldShopping BIZ」も「ZenLink」と同じく、タグをECサイトに埋め込むことで越境ECへの対応が可能になるサービスです。
こちらも商品が売れた後は指定された国内倉庫に商品を発送するだけで国際発送や関税周りまで一括して対応してくれます。
料金は初期費用33,000円と固定費の月額5,500円の費用が発生しますが、売上に応じた手数料などは掛からないため、売上毎の手数料と比較して月額固定費の方が抑えることのできる場合はオススメできるサービスと言えます。
また、メルマガやSNSでの情報発信も無料で行ってくれるため、リーチが難しいターゲットとなる国へのアプローチにも役立ちます。
Buyee Connect(BeeCruise 株式会社)
https://service.beenos.com/buyeeconnect/
「Buyee Connect」も同じくタグをECサイトに埋め込むだけで越境ECへの対応が可能になるサービスです。
事業者は導入費・月額費・販売手数料などがかからず無料で越境ECに対応させることが可能となっており、データ分析や認知拡大、海外販売に必要な機能をオプションとして月額5,500円で導入することも可能です。
また、最大18言語への対応など海外販売が初めての場合でも安心してご利用いただけます。
まとめ
越境ECの展開方法はいくつかありますが、国内で自社ECを立ち上げ、多言語へ対応する方法が一番導入ハードルが低いと言えます。
最近では今回紹介したようなHTMLタグを埋め込むことのできるECカートであればすぐに多言語対応可能なサービスも存在するため、初期コストを抑えながら越境ECを展開することも可能です。
越境ECを展開する場合、関税・通関・言語対応・現地規制など、国ごとに異なるルールや文化への対応が求められる点、決済方法や物流体制の整備、不正利用リスクなどにも心がけましょう。
株式会社清長ではEC事業者様をサポートする物流サービスを提供しています。
越境ECをサポートしている企業についても一部ご紹介が可能なので、越境ECと併せて物流業務の改善にも関心をお持ちのEC事業者様は、ぜひご相談ください。